相続で引き継いだ事業用財産の取り扱い
※2012年9月時点の税制をもとに改訂しています。
相続で引き継いだ事業用減価償却資産と相続の際に支払った登録免許税等の取り扱いについて
このたび父が亡くなり、相続人である私が生前父が行っていた事業を引き継ぐことになりました。それにともない事業の用に供されている減価償却資産を引き継いだのですが、所得計算上、この資産をどのように取り扱えばよいのか教えてください。また、相続の際に支払った登録免許税等は事業所得の計算上必要経費に算入することが出来るのでしょうか。
相続によって減価償却資産を取得した場合、事業所得金額の計算上、相続人は被相続人の取得時期、取得価額を引き継ぎます。また、相続の際に支払った登録免許税については、05年1月1日以降に取得した資産について支払ったものに関しては、その資産の取得価額に算入されるものを除き、必要経費に算入することが可能となりました。
今回は相続で引き継いだ事業用財産の取り扱いについて解説を行っていきます。
1. 相続・贈与等で引き継いだ事業用財産の取得価額
相続(限定承認の場合をのぞく。)贈与等によって被相続人が生前事業の用に供していた減価償却資産を取得した相続人がその事業を引き継いで行っていく場合、事業所得金額の計算上、相続人は被相続人の取得時期、取得価額を引き継ぎます。
つまり、もともと被相続人が取得した資産を、相続により取得した相続人が引き続き所有しているものとみなし、被相続人の相続時における帳簿残高(被相続人の資産の取得価額から、被相続人が亡くなるまで、毎年計上してきた減価償却累計額を差引いた未償却残高)が、そのまま引き継がれることとなります。
2. 相続で引き継いだ事業用財産の減価償却方法
相続によって事業用財産を引き継いだ場合でも、その償却費を計算するための償却方法は引き継がれません。そのため、所轄の税務署長に対し、新たに減価償却方法の届出書を提出する必要があります。
届出をしなかった場合には、通常の資産については定額法で減価償却費を計算することになります。ですから誤った申告の事例として、相続によって取得した減価償却資産について、上記の届出を行わずに被相続人が採用していた定率法によってその減価償却費を計算してしまったということがあげられ、注意が必要といえます。
また、建物の減価償却方法に関しても、1998年(平成10年)4月1日以降の相続によって建物を取得した場合、定額法によって減価償却費を計算することが義務づけられており、たとえ被相続人が生前定率法を選択していたとしても、その償却方法は引き継がれない点にも留意する必要があります。
3. 相続の際に支払った登録免許税等の取扱いについて
これまでは、相続税により不動産賃貸業を親から引き継ぎ、アパート等に関して所有権移転登記にかかる登録免許税を支払ったとしても、その支出は家事上の経費として取り扱われ、所得税法上、不動産所得の必要経費に算入することはできませんでした。しかし、このほど所得税基本通達の一部改正を受け、05年1月1日以降に取得した資産に関しては、その資産の取得価額に算入されるものを除き、必要経費に算入する事が可能となりました。通達の改正によって相続税で取得した業務用資産に係る登録免許税等については(1)特許権・鉱業権のように、登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入し、
(2)船舶・航空機・自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができます。
(1)、(2)以外の資産に係るものについては取得価額には算入せず、当該業務に係る各種所得金額の計算上必要経費に算入することができます。
したがって、農地を相続して登録免許税を支払った場合には、その期間の租税公課として農業所得の経費とすることができ、アパート等を相続するために登録免許税を支払った場合には、その期間の租税公課として不動産所得の経費とすることができます。相続時に支払った登録免許税等はこれまで家事費して扱われていましたが、今回からは事業所得の計算上必要経費に算入することができるようになり、事業者にとって非常に有利な改正であるといえるでしょう。
また05年6月に新設された所得税の基本通達60-2により、譲渡所得等の計算について、相続等の際に相続人等が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときには、当該費用のうち当該資産に対応する金額については、先に述べたように、その資産の取得価額に算入されるもの、また、各種所得の計算上、必要経費に算入された登録免許税等を除き、当該資産の取得費に算入できる旨が明記されました。
ですから相続によって取得した資産を譲渡し、その譲渡所得を計算する際、その資産について相続時に名義変更料を支払っている場合には、これを資産の取得費に含めることができます。ただし、取得費が不明な場合などで概算取得費(譲渡所得の5%)により計算するケースにおいては該当しませんので注意が必要です。
また、今回解説してきた事例に該当する方については、一度専門家に相談されることをおすすめします。
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